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Friday, July 27, 2012

川名雄一郎『社会体の生理学 J・S・ミルと商業社会の科学』(2012)

京都大学の川名雄一郎君から『社会体の生理学 J・S・ミルと商業社会の科学』 http://amzn.to/LRZ0Jr を頂きました。ありがとうございます。勉強させて頂きます。

まだちゃんと読んでないのですが、大変印象に残った一節をメモ。

本書の目的は、ジョン・スチュアート・ミルの1820年代末から1840年代末までの知的活動を、この時期に彫琢されていった彼の現代社会観とそれを科学的認識に高めようとした彼の試みに着目して描き出すことである。別の言い方をすれば、野心的な道徳科学体系を構築しようという彼の意欲をたどることによって、「社会の科学者としてのミル」を歴史的に再構成することである。……

……これまでのミル研究においては、第三の時期、とりわけそのなかでもしばしば成熟期とも呼ばれる1850年代以降に執筆・公表された『自由論』(1859年)、『代議政治論』(1861年)、「功利主義」(1861年)などの論考に関心が向けられることが多かった。……しかし、本書で「社会の科学者としてのミル」を論じるために検討されるのは1850年代以降に出版されたこれらの著作群ではなく、1820年代末から1840年代にかけての議論であり、とりわけ重視されるのは1843年に初版が出版された『論理学体系』である。『論理学体系』は16歳の時に著述活動を開始したミルが37歳の時に出版した最初の著作であった。いわゆる早期教育以来の彼の思索の成果がふんだんにもりこまれた『論理学体系』は、自身が『自由論』とともにもっとも長く残っていくだろうと自負した著作であったし、同時代の思想家にとって「この時代の私たちのもっとも重要な知的記念碑」と評すべき傑作であった。

……本書がたどるのは包括的な社会事象研究の体系を構築しようという、とりわけ1830年代から1840年代にかけて強く表明されていた、彼の意欲である。「意欲」という言葉が示唆するように、それは未完のままに終わった、いわば「失敗のプロジェクト」であった。したがって、本書の関心は体系そのものだけでなく、そのような体系を作り上げようとした彼の試みを跡づけることにも向けられる。彼の意欲的なプロジェクトを理解するための手がかりとなるのは、とりわけこの時期の彼がしめしていた歴史論や性格形成論に対する関心である。したがって、本書はこれまで十分に検討されてきたとは言いがたい彼の歴史論や性格形成の科学構想を検討することにも多くの紙幅を割くことになる。(1-5頁)
敢えて「失敗のプロジェクト」の骨を拾うという、なんともいさぎよい試み。

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