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Wednesday, July 06, 2005

試験に出る教養?

科目名に「法」が付いてない科目を露骨に無視する新入生に、人文社会系の教養を身につける必要性を説くには、「教養がないと、ロー入試の小論は解けないわよ」という身も蓋もない話をするのが一番だと愚考し、とりあえずこういうものを作ったりと苦労していたわけだが、某書店のめったに行かないコーナーで浅羽通明『教養としてのロースクール小論文 講義録』(amazon / bk1)をハケーン。

予備校本という体裁にどう反応すべきかといえば、だからこそ400頁を超えていて2000円という価格に収まっているわけで。(それに、予備校本以外のかたちで、この手のものが出ることはおそらくないだろうし。)

但し、ホッブズの「原初状態」論(?)等、ところどころ気になる点もあったりするので、読む際には若干の用心が必要ではあるのだが。(あるいは、ひょっとしたら「自然状態」を「原初状態」と言い間違う受験生に妙な好感を抱く採点担当者がいそうだということを予想しているのでは…………たぶんないだろうと思う。)

著者のような書き手がこういうものを書いてくれるというのは歓迎すべきことではないかと思いつつも、外在的な解説に徹するという著者のスタイルには、実を言えば個人的には必ずしも好感を持てなかったりする。

例えばあとがきには次のような問題提起がある。

私が思うのは、法解釈しか知らぬ法曹だけではなく、広い社会的視野をもった人材を集めるのが目的だったはずの未修者コース入試において、現代思想や社会哲学がらみの出題が、こんなにも(私が対策講座の講師にかり出されるくらいには)多いのは何かがずれていないかという疑問である。

こうした分野に長けているのは、どちらかといえば、昔の哲学青年や左翼青年、今なら思想おたくといったタイプであろう。どう考えても、実務家よりは学者とか芸術家タイプ、ニート、ひきこもり予備軍といったほうがよい連中ではないか。そうしたタイプの法曹がいてもよいとは思うが、どうもそちらに偏った出題が多数というのはどうか? それが私の錯覚であればよいのだが。その点、私にはさっぱり歯が立たない(ゆえに本書では触れていない)、契約文の内容や公害防止条例の条文をチェックさせる明治大学は、有能な実務的社会人を合格させやすい良問のように思われた。

要するに、社会思想やその周辺の分野についての私の益体もない知識が、ロースクール受験生という需要者を得て、商品価値を持った奇観は、何よりもこの新制度の欠陥ゆえに違いなかろう。(426-427頁)

「有能な実務的社会人」になるのに、「こうした分野」の知識は不要であり、むしろ有害でさえあるというようなローティ的「実務への屈服」の臭いがぷんぷんと。「昔の哲学青年や左翼青年、今なら思想おたくといったタイプ」「どう考えても、実務家よりは学者とか芸術家タイプ、ニート、ひきこもり予備軍といったほうがよい連中」というくくり方には、正直なところ嫌悪感を覚える。「有能な実務的社会人」も「現代思想や社会哲学」を知っておくべきだと思うのだが、間違っているだろうか。(というか著者自身が「はじめに」に書いていることと矛盾しているような気が……。)

あー、なんだかまた自虐的な……。「必要」かどうかなんて本来どうでもいい話であって。(無限ループへ)

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Comments

「有能な実務的社会人になるのにこうした分野の知識は不要」と書いてあるようには読めません。現状認識として、その手の分野のことをよく知っているのは現在の状況下では実務家ではなく哲学青年やおたくであり、前者より後者のほうが現状の入試問題を解くのは得意だろうから、本来欲しいはずの前者より後者のほうがたくさん合格しちゃうよ、当初の目的とその実現手段が食い違ってるんじゃないかね、と言っているように読めます。

つまり浅羽さんは、「べき」論を言っているのではなく、極めて目的合理的な話をしているのではないかと思います。

「おそらく間違いない」??

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